子猫に最適な「室内温度」と「室内湿度」
ここ数年ニュースでよく熱中症が取り上げられていることから夏は「動物の暑さ対策」に注意している飼い主さんも多いのではないでしょうか?
「動物の暑さ対策」はとても重要ですが、冬の温度管理・湿度管理もきちんと対策を行う必要があります。
特に成長期にある子猫は成猫以上に細かく管理をしてあげる必要があり、最悪の場合だと重大な疾患を引き起こしてしまう可能性が大いにあり得ます。
この記事では飼い主さんが悩みやすい子猫にとって最適な冬の「室内温度」と「室内湿度」に焦点を当てて解説していきたいと思います。
子猫の体温調節機能
子猫は生後1ヶ月ほどにならないと自分で体温をキープすることができないため、母猫や兄弟姉妹猫がいるときは常にくっついて温め合います。
生後1ヶ月未満の子猫を単独で育てるときには、子猫を育てているケージなどの中にペット用の湯たんぽやカイロなどを側に置いてあげましょう。
その際はタオルや毛布、カバーなどで覆って直接触れた時に熱すぎないようにし、可能な限りふわふわした感触のもので猫の毛皮代わりになるように素材を工夫する必要があります。
子猫に最適な室内温度
室内温度を管理するために子猫がよくいる場所には温度計を設置しましょう。
温度計を設置する際の主なポイントとしては「子猫の手が届かない場所」と「子猫の目線に近い位置」の2点になります。
- 子猫の手が届かない場所
- 子猫の目線に近い位置
子猫のお世話をしたことのある飼い主さんはよくご存知だとは思いますが、いわゆる「成長期」である子猫は特にイタズラ盛りのためあらゆるものに興味を示します。
子猫が簡単に触れることができないように、透明な扉があるキャビネットの中などに温度計を設置して安全を保ちましょう。
そして空気には「冷たい空気は下へ下がり、暖かい空気は上へ上がる」という性質があります。
人間が暖かいと感じていても、それ以上に低い位置で生活している子猫は寒いと感じている可能性があるため高低差による温度差には注意が必要です。
そして肝心な室内温度ですが、一般的に猫にとって快適な冬の室内温度は「約20~23℃」といわれています。
子猫の頃は免疫機能などが未発達のため、室温が低くなり体温が下がってしまうとすぐに猫風邪をひいてしまう可能性があります。
室温はエアコンで「約20~23℃」に設定した上で、子猫のベッドの中に毛布や布団を敷いてあげましょう。
さらにペット用の湯たんぽやカイロ、ヒーターなどを置いてあげることをおすすめします。
このような寒さ対策をすることによって、エアコンだけでは寒いときに子猫が自分からベッドに潜り込んで温まることができます。
部屋を自由に移動することができる環境で子猫を飼育している場合は、全ての部屋のエアコンを常に付けていると電気代が高くなってしまいます。
子猫のうちは「入ることができる部屋」を決めておいて、子猫がいる一室のみエアコンで温度管理をするのが良いでしょう。
子猫に最適な室内湿度
湿度は低すぎても高すぎても子猫にとって不快な数値です。
室内の湿度の数値を測るためにも必ず湿度計を準備しましょう。
こちらも温度計と同じく安全のために「子猫の手が届かない場所」に設置してください。
そして肝心な室内湿度ですが、猫にとって冬の快適な室内湿度は「約50~60%」と言われています。
加湿器などで湿度が常時「約50~60%」となるように調整してあげましょう。
最近では運転させると自動的に50%〜60%前後の湿度を保ってくれる加湿器も多いので、余裕があれば加湿器を置いてあげることをおすすめします。
しかし加湿器を購入する際には気を付けなければならないことがあります。
加湿器について
加湿器には様々な加湿方法がありますが、避けなければならないのが「スチーム式」と「アロマ式」の加湿器です。
「スチーム式」はヒーターでお湯を沸かした蒸気で加湿を行うタイプの加湿器のため、噴き出す蒸気が高温であり本体にも熱湯が入っています。
子猫が蒸気に触れたり、加湿器を倒した際に火傷を負う可能性が非常に高いため「スチーム式」以外の「気化式」「超音波式」「ハイブリット式」を選びましょう。
スチーム式は絶対に
選んだらダメですよ!
「アロマ式」の場合は蒸気に含まれている精油を毛づくろいしているときに舐め取ってしまい、口から成分を摂取してしまう可能性が高いので使用を控えましょう。
猫は肝臓の解毒機構のひとつであるグルクロン酸抱合能力が低いということが分かっており、薬剤や精油などの脂溶性物質を水溶性にして体外に排出する能力が低いという特徴があります。
精油に関連すると思われる中毒症状は「下痢・食欲廃絶・震え」などの多岐に渡り、重度だと肝不全を起こしてしまうこともあるため「アロマ式」は使用しないようにしましょう。
また、子猫に限らず猫は音に敏感なため加湿器の運転音がストレスになる可能性があります。
音が大きいものではなく、静音機能があるものや稼働音が小さい加湿器を選ぶことをおすすめします。
- スチーム式とアロマ式の加湿器は使用しない
- 猫は音に敏感なためできるだけ稼働音が小さい加湿器がおすすめ
冬の温湿度管理を怠ってしまうと?
子猫にとって最適な冬の「室内温度」と「室内湿度」について解説してきました。
最後に温度と湿度の管理を怠った場合に、子猫に起こりやすい「主な体調不良を3つ」ご紹介したいと思います。
低体温症
子猫においては生後の週齢ごとに正常な体温(直腸に体温計を入れて測った直腸温)の目安には変化があります。
生後の週齢 | 正常な体温 |
---|---|
生後1週齢 | 35℃ 〜 37.2℃ |
生後2〜3週齢 | 36.1℃ 〜 37.8℃ |
生後4週齢〜 | 37.2℃ 〜 38.3℃ |
生後8週齢〜 | 成猫になったときの平熱 |
子猫が生後8週齢頃になると体温を測り平熱を記録しておきましょう。
人間と同じように子猫も1匹ずつ平熱が違うので、獣医に相談する際に伝える情報として役立ちます。
何より飼い主が子猫の変化を身近で感じることができるので「平熱以上の日が続き、元気がなくぐったりしているから病院に連れて行く」という判断ができるようになります。
そして子猫の低体温症は一般的に「35.5℃を下回った時」を意味するため、子猫が幼いほど危険性が高くなります。
症状としては「食欲不振・動けずぐったりする・震えている」などがあり、長く続くようであればすぐに病院へ連れて行きましょう。
- 食欲不信
- 動けずにぐったりしている
- 震えている
猫風邪
ウイルスなどの病原体によって風邪のような症状を引き起こす、いくつかの感染症を総じて「猫風邪」と呼びます。
症状が悪化して鼻が詰まると匂いが嗅げなくなったり、口内炎の痛みで食欲がなくなってしまう可能性があるので子猫の容態の変化には注意しましょう。
猫風邪のウイルスは湿度が低下すると活発化し、体の冷えは免疫力を低下させるため罹患しやすくなります。
予防するためには定期的にワクチンを打つことや、感染している猫に接触させないことです。
また、適度な運動をさせて新鮮な食事を与えましょう。
子猫の免疫力を下げない生活を心がけることが猫風邪の予防に繋がります。
- 発熱
- 鼻水、くしゃみ
- 咳、口内炎、よだれ
- 結膜炎、涙目、目ヤニ
下痢
まだ成長段階にある子猫は「冷え」によって胃腸などの働きが弱くなりお腹を壊してしまう場合があります。
下痢が続くと体力が低下したり、脱水症状を引き起こす可能性が高いため注意が必要です。
脱水症状を防ぐためには積極的に水分を摂る必要があるので、冷たすぎない水や食欲があるのであればウェットフードで水分を補給しましょう。
しっかり室内の「温度」と「湿度」を管理して
寒い時期も楽しく子猫と過ごしましょう!
監修獣医師:松本千聖