猫は暑さに弱い動物
飼い主さんの中には「猫は寒さに弱いけどその分暑さには強い」や「猫の祖先は砂漠地帯に住んでいたから暑さ対策は必要ない」などの考えを持っている方も多くいますよね。
実はこれらの猫に対するイメージは間違っていて、実際には猫も犬と同様に暑さには弱いため、適切な暑さ対策を行ってあげないと「夏バテ」してしまい体調を崩してしまう危険性があります。
今回の記事では「猫の夏バテ」について獣医師がしっかりと解説していきたいと思います。
この記事を読んで愛猫と一緒に暑く厳しい季節を乗り越えましょう!
猫の体調管理に
気をつけないと・・
猫の「夏バテ」とは?
そもそも「夏バテ」とは1つの疾患を示す言葉ではなく、主に夏の暑さによる自律神経系の乱れによって引き起こされる様々な体調不良をまとめて「夏バテ」といいます。
「夏バテ」の症状
猫によく見られる夏バテの症状としては主に以下のものが挙げられます。
食欲が落ちる
猫は季節によって食欲に変化があるといわれています。
春から夏にかけて暑くなってくると「食欲が少し低下」し、夏が過ぎて秋が近づくと「食欲が上昇」します。
そして冬には「最も食欲が旺盛」になり、また春が来る頃には落ち着いてくるといった「食欲のサイクル」を1年ごとに繰り返しています。
夏バテをしている際には胃腸の機能が鈍くなっているため、半分以上フードを残したり全く食べなくなってしまう場合があります。
そのときは猫の様子を見ながらフードの量を調整してあげましょう。
夏場はフードが傷みやすいので
残したらすぐに片付けましょう!
夏バテしたら食べる気力がなくなるにゃー
嘔吐や下痢が見られる
夏バテによる消化器系の不調によって「嘔吐や下痢」が引き起こされることもあります。
嘔吐や下痢によって脱水症状となり、ますます体調が悪化してしまう危険性もあるため注意が必要です。
症状が収まらなかったら
すぐに病院に連れていかなきゃ・・
元気がなくなる
猫は基本的にはよく寝る動物ですが、普段と比べて怠そうにしていたり呼びかけやおもちゃなどに反応を示さない時は夏バテを疑ったほうが良いでしょう。
おしっこの量や回数が減る
元気なときと比較して「おしっこの回数が減る・1回あたりの量が少ない」場合は夏バテによる脱水症状の危険性があります。
おしっこの異常に気づくことができるように、普段から愛猫のトイレの回数や量を把握しておくようにしましょう。
「夏バテ」の原因とは
自律神経の乱れによって引き起こされる夏バテですが、律神経が乱れてしまう原因はどこにあるのでしょうか?
そもそも猫の自律神経には、人間と同じように気温の変化に応じて血液の流れなどを調整し「体温を一定に保つ働き」があります。
しかし、夏は冷房が効いている部屋と効いていない廊下などの間で気温がかなり変わるため、体温調節を行う自律神経に過度な負荷がかかりバランスが崩れてしまうと考えられています。
また、人間と違って猫は全身に汗をかかないので体の中に熱がこもりやすくなることも「夏バテの原因」になります。
人間が思っている以上に
猫の体温は上がるんだね・・
「夏バテ」の治療
夏バテに効果がある薬は存在しないため、動物病院では基本的に「対症療法」で治療されます。
脱水症状がある場合は点滴による水分補給。
嘔吐・下痢をしている場合は吐き気止めや下痢止め、整腸剤などの薬の投与・処方。
さらには飼い主さんに猫が過ごしている生活環境を確認し、改善するようにアドバイスを行うこともあります。
「夏バテ」の予防方法とは
夏バテは主に自律神経の乱れによって起こるため、動物病院を受診してもすぐに症状が改善しない場合もあります。
そのために飼い主さんによる予防がとても大切になってきます。
では、夏バテの予防方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
猫が過ごす場所の室温と湿度を快適な状態にする
人間にも暑がりの人や寒がりの人がいるように、猫にも個体差があるため猫にとっての適温を決めることは難しいといえます。
一般的に猫にとって快適な温度は「20〜28℃」といわれているため、その範囲内で愛猫がどの室温が一番快適そうにしているか飼い主さんがよく様子を観察しましょう。
見極めた後は冷房などを使用してその室温を保つようにします。
温度とは違って湿度にはあまり個体差がなく「50〜60%程度が理想的」とされています。
そのため加湿器や除湿機などを使用して、その範囲内となるように調節してあげましょう。
猫の食欲が落ちないように工夫する
暑くなってくると食欲が少し低下することは猫の性質ですが、暑さに負けない体力維持のために可能であれば適切なカロリーを摂ってもらう方が安心です。
治療などのため食べるものに制限がない場合は、猫がフードを残さないように猫用のふりかけなどで味を変化させてあげても良いでしょう。
また、いつものフードに飽きてきているようならば消化管に影響がないように少しずつ時間をかけて新しいフードに切り替えることの検討もおすすめです。
ただしいつもの量を食べないからといって無理に食べさせようとしたり、体力維持のためにフードの量を増やしたりすることは猫が体調を崩してしまう危険性があるため行わないようにしましょう。
猫が水分を取るように工夫する
1日に必要な水分量をしっかり取ってもらうためには、普段の食事にウェットフードとドライフードを併用する「ミックスフィーディング」がおすすめです。
「ミックスフィーディング」にはドライフードとウェットフードを混ぜる、それぞれ別々のお皿に入れて与える、朝と夜はウェットフード、お昼はドライフードと時間によって分けるなど様々な方法があるため愛猫と飼い主さんにとって行いやすいやり方で問題ありません。
ただ、ドライフードと比べてウェットフードには置きっぱなしにしない、開封後は冷蔵庫に保存して早めに使い切る、などの様々な注意点があるため気をつけるようにしましょう。
また、カロリーも計算して適切となるように、それぞれのフードの量を調整することを忘れないようにしてくださいね。
猫の「夏バテ」は動物病院を受診すべき?
夏バテに関わらず、愛猫の調子がいつもと違うと感じたら基本的にはすぐに受診または電話で相談しましょう。
しかし「元気で便や尿に異常はないが普段と比べてほんの少しだけフードを残す」「便や尿に異常はなくて食欲もいつも通りだが、よく寝ている」などのごく軽度の症状ならば自宅の環境を整えることで改善できる可能性があります。
反対に「嘔吐や下痢をしている」「フードの残しが目立つ」「明らかに元気がない」「おしっこの量や回数がかなり減った」などの症状が見られたら夏バテが重症化している危険性があるため、速やかに受診するようにしましょう。
- 嘔吐や下痢をしている
- フードの残しが目立つ
- 明らかに元気がない
- おしっこの量や回数がかなり減った
猫が体調不良になるかもしれない人間の行動
「夏バテ」は私たち人間にも起こる状態のため、つい愛猫にも人間と同じような対策を取ってしまう飼い主さんもいるかもしれませんが、その行動が逆に「夏バテ」などの体調不良を引き起こすかもしれません。
例えば「猫が暑くないように部屋をキンキンに冷やす」や「体温を下げるために氷水を与える」「体力をつけるためにフードを急に切り替える」「人間用のスポーツドリンクを与える」などは全て猫の健康を損なう可能性が高いため、行わないようにしましょう。
まとめ
猫にとって「夏バテ」は辛い状態であり、放置して重症化してしまうと命の危険につながってしまう可能性もあります。
飼い主さんが対策を取ってあげることで予防できることが多いため、愛猫のためにも快適な生活環境を整えてあげてくださいね。
暑い季節は猫が涼しく過ごせる
環境を整えてくださいね!
監修獣医師:松本千聖