健康にも影響する「猫の歯磨き」
最近、人間の医療でも「口内環境の重要性」がますます注目されていますが、猫においても口内環境が健康につながるということはご存知でしょうか?
米国獣医歯科学会の研究によると、なんと猫の約70%は3歳までに「歯周病」を発症する可能性が高いということがわかっています!
また、口内環境が健康に保たれていないと「歯周病や歯肉口内炎」などのお口の病気だけではなく、口腔の粘膜から細菌が血管に入り込んで全身に広がり「糸球体腎炎・心臓疾患・肝臓疾患」などを引き起こすことが、最近の研究で明らかになってもいます。
猫は犬と比べてお口を触られることを嫌がる傾向にあるのも事実であるため、デンタルケアについて悩まれる飼い主さんも多いと思います。
また、嫌がる猫に歯磨きを無理強いすることでストレスを与えてしまっては意味がありません。
今回の記事では歯磨きに悩む飼い主さんのために、歯磨きのステップアップと猫におすすめの歯磨きおやつについて解説していきたいと思います。
猫の歯磨きの基本的なステップアップ
歯磨きおやつについて解説していく前に、まずは基本的な歯磨きのステップアップについて説明していきます。まだ一度も猫に歯磨きを試されたことがない方は、一度以下の方法を試してみても良いかもしれません。
口元を触られることに慣れてもらうために、まずは口内ではなく顔や口元を優しく撫でたりマッサージしてあげましょう。
焦る必要はなく「猫がリラックスできているか」を第一優先で行います。
①に抵抗がなくなれば、次は唇をめくって歯や歯茎に優しくタッチしてみましょう。
猫が嫌がらないようならば、少しずつ指を奥まで入れて臼歯と呼ばれる奥歯まで触れることを目指してみます。
②も問題なくできるようならば、次は指に巻いて歯をみがく歯みがきシートを使ってみましょう。
このとき猫用の歯磨きペーストをシートに塗ってから、歯みがきシートで巻いた指で1本ずつ歯に触れて、優しく汚れをとるようにみがいてあげることをおすすめします。
③の歯磨きシートもクリアできれば、いよいよ歯ブラシに挑戦してみましょう。
要注意ポイントとして、必ず猫用の歯ブラシを使用する必要があります。
猫の口内はとてもデリケートなため、例え赤ちゃん用の歯ブラシでも口内を傷つけてしまう危険性があるからです。
どの歯ブラシを使えばよいかわからないときは、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
まずは猫の口元に歯ブラシを軽く当てたりして歯ブラシの感触に慣れてもらいます。
感触を嫌がらなくなれば、お口の奥に入れたり唇をめくって臼歯や犬歯を中心にみがいてあげましょう。
以上が猫の基本的な歯磨きへのステップアップですが、決して焦らず、長い期間をかけて①~④を少しずつクリアしていくこととなります。
しかし、子猫からではなく成猫になって初めて歯磨きを行う場合は、慣れることに難しい可能性があります。
猫のストレスになっていると感じたら、歯磨き以外の方法でのデンタルケアに目標を切り替えても良いかもしれません。
歯磨きができない場合の対策
猫の歯磨きができないからといって、デンタルケアを諦める必要はありません。
歯磨き以外にも、飼い主さんができることはたくさんあります。
ここからは歯磨きに代わるデンタルケアを3つご紹介していきます。
定期的にスケーリングを実施する
スケーリングとは主に「歯石取り」を意味しており、動物病院で全身麻酔下によって行われる処置となります。
処置の主な内容としては、専門の器具を使用して歯石除去を行い、その後は歯周ポケットの内部の歯石や歯根表面の汚れを除去。
最後に歯の表面を磨いてピカピカにしたり歯石の再付着を防ぐための薬剤を塗布したりして完了となります。
ただ、やはり全身麻酔下の処置となるため猫の年齢や体調などによっては行うことが難しい場合もあり、お家で手軽にできるケアではない点がデメリットともいえるでしょう。
飲水やフードにデンタルケア製品を混ぜる
猫が普段飲んでいるお水やフードに混ぜるだけで、デンタルケアを行うことができる「飲む歯磨き・液体ハミガキ」を使用しても良いでしょう。
メーカーにもよりますが、多くの商品は無味無臭のため、混ぜても気がつかない場合が多いと考えられます。
ただ、猫によっては混ぜられていることに気づいて、お水やフードを警戒してしまう可能性もゼロではないため、神経質な子の際は注意が必要です。
歯磨きおやつを与える
デンタルケアを猫とのコミュニケーションの一環として行いたい飼い主さんには、歯磨き効果や口内環境を整える効果が期待できるおやつがおすすめです。
多くのメーカーから、いろいろなタイプが発売されているため、愛猫が喜ぶものはどれか試してみても良いでしょう。
カロリーや与える量などに注意すれば、猫は美味しいおやつをもらえますし、飼い主さんにとっても猫の喜ぶ様子が見られて、かつデンタルケアもできると一石二鳥になります。
おすすめ歯磨きおやつ5選
数ある歯磨きおやつの中には、成分が少し心配なものや効果に疑問があるものもゼロではありません。
そこで、最後におすすめ歯磨きおやつを5選ご紹介していきます。ぜひ、歯磨きおやつ選びの参考にしてくださいね。
デンタルバイオ
公式サイト:デンタルバイオ | 共立製薬株式会社 (kyoritsuseiyaku.co.jp)
口腔内善玉菌(Streptococcus salivarius K12) 粉末、ラクトフェリン、崩壊剤(エフメルトF1)、 酵母エキス、チキンフレーバー、イソマルトオリゴ糖、 ステアリン酸Ca、増粘安定剤(CMC-Ca)、二酸化ケイ素
口腔内善玉菌(Streptococcus salivarius K12) 粉末、ラクトフェリン、崩壊剤(エフメルトF1)、 酵母エキス、チキンフレーバー、イソマルトオリゴ糖、 ステアリン酸Ca、増粘安定剤(CMC-Ca)、二酸化ケイ素
おすすめポイント
多くの動物病院でも取り扱われており、おやつとしてだけではなくサプリメントとしても使用できます。
主な有効成分は摂取することで健康上の利益が得られると考えられているプロバイオティクスの「口腔内善玉菌(Streptococcus salivarius K12)」と外部から進入する細菌やウイルスからの攻撃を防ぐ防御因子のひとつと考えられているタンパク質の「ラクトフェリン」です。
チキン味のため、多くの猫は好んで食べてくれる傾向にあります。
注意点として口腔内善玉菌(Streptococcus salivarius K12)は口内の唾液と混ざることによって活性化するため、猫が丸呑みしてしまう場合は粉にして舐めさせてあげるようにしましょう。
猫用グリニーズ™ 歯磨き専用スナック
公式サイト:猫用グリニーズ™歯みがき専用スナック|グリニーズ™製品ラインアップ|Greenies™
原材料(グリルツナ味):チキンミール、小麦、米、コーングルテン、鶏脂*、オーツ麦繊維、タンパク加水分解物、亜麻仁、乾燥酵母、ツナエキス、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、D3、E、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)、ミネラル類(カリウム、カルシウム、クロライド、コバルト、セレン、ナトリウム、マンガン、ヨウ素、亜鉛、鉄、銅)、アミノ酸類(タウリン、メチオニン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)、着色料(スイカ色素、ゲニパ色素、ウコン色素)
*ミックストコフェロールで保存
おすすめポイント
米国獣医口腔衛生協議会認定、米国獣医師推奨の歯磨き用おやつです。
グルメな猫のために「グリルツナ味」「チキン味&サーモン味」「グリルチキン・西洋マタタビ風味」「香味サーモン味」「ローストチキン味」といった、全部で5種類のフレーバーが販売されています。
粒が割れにくく、歯が奥まで深く入り込むという独特の構造により噛むことで歯垢の沈着を抑えることができる点がポイントです。
なお、成猫用総合栄養食の基準をクリアしており、カロリーもフードと同様であるため与える量には注意が必要です。
「ピュリナ デンタライフ」キャット デンタルケア スナック
公式サイト:[ピュリナ デンタライフ] デンタルケア スナック チキン
穀類(とうもろこし、コーングルテン)、チキン、たんぱく加水分解物、牛脂、セルロース、デキストロース、酵母、乳酸菌、グリセリン、ミネラル類(カルシウム、リン、ナトリウム、クロライド)、ビタミンE、アミノ酸類(タウリン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール)
おすすめポイント
米国獣医口腔衛生協議会によって、歯石のコントロールを助け、歯磨き効果があることが認証された歯磨き用おやつです。
通常の粒よりも穴の多いクリスピーな粒で、サクサク噛むことで歯石の蓄積をコントロールすることが証明されています。
また、カロリーも低く抑えられているため、安心して与えることができます。
C.E.T.®インテリデント
公式サイト:C.E.T.®インテリデント|機能性おやつ|ビルバックジャパン – Virbac
物粉ブレンド(玄米、トウモロコシ粉、コーングルテンミール、チキンミール、フィッシュミール、ゼラチン(牛由来)、塩、硫酸カルシウム、ビール酵母、セルロース)、グリセリン(植物由来)、合成フレーバー(チキン、酵母、フィッシュ、大豆油)、加水分解チキンレバー、チキンフレーバー、鶏脂、サーモンオイル、ポリリン酸ナトリウム、ザクロエキス、保存料(ミックストコフェロール)、リン酸、pH調整剤、着色料(酸化鉄)
おすすめポイント
インテリデントを実際の猫に与えてその効果を確かめた試験では「歯垢が10%、歯石は24%減少」したという、噛むことで歯垢・歯石が減ることが実証された歯磨 き用おやつです。
構造としては2層に分かれており、外側には噛むことで強い歯を守ることのできる成分であるポリリン酸ナトリウムが配合されています。
内側には、サーモンオイルとザクロエキスが配合されており、それぞれ口腔内や歯肉の健康を守る働きがあります。
DR.VOICE 猫にやさしいトリーツ 歯磨きサポート
公式サイト:猫にやさしいトリーツ | ヴォイス株式会社 (voice-pet.com)
麦粉、グリセリン、チキンエキス、乾燥全卵、炭酸カルシウム、ソルビトール、クリノプチロライト、鰹節粉末、コーン油、ビフィズス菌培養代謝物、魚類粉末、剥離米粉、フィッシュペプチド、ホエイパウダー、コーンスターチ、クエン酸、牛初乳濃縮物、卵黄粉、タウリン、チキンキトサン、乳化剤、プロポリス、大麦若葉、熊笹エキス粉末、葉緑素(クロロフィル)、リゾチーム、ラクトフェリン
おすすめポイント
獣医学博士と獣医師により設計された 愛猫用トリーツ「DR.VOICE猫にやさしいトリーツシリーズ」の中の1つです。
お口の中の健康維持を期待できる様々な成分が配合されており、また生地に弾力を持たせた長めの板状の形により、噛むことで歯磨き効果が出るように配慮されています。
まとめ
猫のお口の健康を守るためにできることは歯磨きだけではありません。
この記事を参考にして、愛猫との楽しいデンタルケア習慣を取り入れてみてくださいね。
監修獣医師:松本千聖